はじめて文化服装学院のパンフレットを手にしたのは、何年前だったかな。
学生のころからずっと、「服を作る人になりたい」という気持ちは、
小さくても、確かに私の中にありました。
でも、その夢にはいつの間にか、ふたをしてしまっていました。
「時間がない」「もう歳だから」「いまさら無理かも」
そんな言葉を自分にかけては、静かにあきらめるふりをして。
針を見るのが、どこか怖かったのです。
布にふれると、心がざわざわして、
手を伸ばせないまま、ただ見つめるだけの時間が流れていきました。
「本当はやってみたい」
「でも今さら、夢だなんて言えない」
そう思いながらも、そっと背を向けていました。
だけど今日。
本棚にしまいこんだままのテキストを見て、
ふと、少しだけ心がほどけました。
「もう一度、針を持ってみようかな」
そんな気持ちが、小さく、でもちゃんと湧いてきたのです。
まだうまく縫えないし、不器用なままの手だけれど、
今日は、「やってみよう」と思えた日。
しまっていた夢に、
ちょっとだけ、ほこりを払ってみた朝でした。